結婚を約束する際に婚約指輪を贈る風習があることは知っていても、その本来の意味は知らない、という方は意外と多いのではないでしょうか。本コラムでは、婚約指輪の本来の意味や由来、結婚指輪との違い、現在の価格相場などについて詳しく解説します。婚約指輪を購入すべきか、その意義や必要性について悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
婚約指輪の由来と現在の意味
婚約指輪とは「生涯をともにしよう」と誓いあった、唯一無二の証となるもの。婚約はふたりだけの口約束のため、その証明となるものとして交わされてきた歴史があります。
婚約指輪の由来について
婚約指輪の由来は、古代エジプト時代の象形文字にまでさかのぼります。当時、「円」は永遠に途切れないものとして象徴として、結婚を意味していました。紀元前1〜3世紀の古代ローマ時代になると、婚約時に「鉄の輪」が贈られるように。当時、婚約は結婚よりも重要視されており、力の象徴とされる鉄の輪を婚約の証としてパートナーに贈ることで、「結婚の契約をした」とみなされていたのです。これが、婚約指輪を贈る風習につながったとされています。
15世紀になると、史実にも明確にその存在が記されるように。記録によれば、ハプスブルグ家の王子マクシミリアンが、婚約の際にダイヤモンドをあしらった金の指輪を贈ったことがわかっています。19世紀頃にはダイヤモンドはもちろん、ルビーやエメラルドなどをあしらった贅沢な婚約指輪が流行した時期もあったと言われています。
日本において婚約指輪を贈る習慣が始まったのは、戦後の1950年代後半。それ以前には婚約時に結納記念品などの贈り物をする文化がありましたが、結納が簡略化されていくなかで、婚約指輪を贈る風習に置き換わっていきました。その後、ダイヤモンドの輸入が解禁された1980年代にはTVCMの影響もあり、また高度経済成長期の豊かさの象徴として、ダイヤモンドの婚約指輪が一般的になっていきました。
現在の婚約指輪が持つ意味
時代の価値観は変化を続けていますが、最新の調査(※1)においても、結婚を決めたカップルの約7割が婚約指輪を贈っています。現代の婚約指輪にはどのような意味があるのか、3つの主な理由をご紹介します。
①2人の愛や決意の象徴として
婚約指輪を贈るという行為は、贈る側にとって、「この相手と生きていこう」と決意を固めるきっかけになります。さらに贈られる側にとっても、「こんなに自分を大切に思ってくれている」と実感でき、これからの苦楽をともにしていく決心が固まる、という相乗効果も。結婚後、プロポーズ時の決心や恋人時代の幸せを思い出すためにも、大きな役目を果たしてくれます。
②婚約の約束をした確かな証として
結婚と違い、婚約には正式な届がありませんし、それによって苗字が変わることもありません。人生を左右する大きな約束にも関わらず、「その証がないこと」を不安になる人もいるでしょう。そのようなとき、婚約指輪はふたりの約束の唯一の証となります。また婚約指輪を左手の薬指に着けていれば、婚約をしている事実を説明不要で周囲に伝えることができるため、社会的な証明としての役割も果たします。
③一家の財産として
婚約指輪の素材として人気のプラチナやゴールド、そして多くの婚約指輪にあしらわれているダイヤモンドは、時代を超えて不変的な価値があるもの。結婚後もふたりにとって大切な資産となり、欧米などではそのままの形で、あるいはデザインやサイズなどに手を加えながら、子どもや孫世代に受け継がれていくことも少なくありません。婚約指輪に込められる家族の想いや歴史は、金銭的な価値以上の財産になります。
実際、上述の調査(※1)にて婚約指輪の手配方法についてなされた質問では、「譲り受けたものをリフォームした」という人も2.2%おり、例年3%程度の人が親から受け継いだ指輪を活用していることが分かります。夫婦だけのものとして扱われる結婚指輪と比べても、婚約指輪は一家の財産として受け継がれやすい傾向があります。
(※1)「結婚トレンド調査2021」より
婚約指輪にダイヤモンドを選ぶ人が多い理由
婚約指輪のデザインは、中央にダイヤモンドがあしらわれたソリテールタイプが一番人気。最新の調査(※1)でも半数以上の人(50.2%)が選んでいます。そのほか、メレダイヤモンドやパヴェ、エタニティなどのデザインも合わせると、実に96.0%がダイヤモンド付きの結婚指輪を選んでいます。
なぜ、ダイヤモンドがあしらわれた婚約指輪はこれほど人気なのか。前述したように、日本では1980年代のCMなどの影響も相まってダイヤモンドの指輪が定番となっていきましたが、世界中でダイヤモンド付きの婚約指輪が選ばれるのは、主に以下のような理由があります。
(理由1)
ダイヤモンドは地球上でもっとも硬い天然鉱物。「ダイヤモンドを傷つけられるのは、ダイヤモンドのみ」と言われるほど、簡単には傷もつけられない宝石です。そうした特徴が、ふたりの固い不変の絆をあらわすシンボルとして、婚約指輪に最適だと考えられています。
(理由2)
約1トンの岩から採掘できるダイヤモンドは、わずか0.25カラットほど。ダイヤモンドには工業用のものとジュエリー用のものがあり、ジュエリー用の高品質なものは、さらに貴重になります。希少性の高い宝石であることも、唯一無二の想いを伝える婚約指輪にぴったりです。
(理由3)
宝石には色が付いているものが多いですが、ダイヤモンドは無色透明な宝石。その澄んだ輝きは、誠実さや純真無垢なイメージに重なり、婚約指輪をはじめとしたブライダルジュエリーに用いる宝石として愛されています。
婚約指輪を左手の薬指に着ける理由
婚約指輪を着用する指が「左手薬指」であることは、多くの人が知っているかと思います。なぜ、左手薬指が定番となったのでしょうか。
これは、古代エジプトの言い伝えに由来します。当時、「左手の薬指には心臓につながる太い血管が通っている」とされ、かつ「人の心は心臓にある」と考えられていたため、左手薬指に婚約指輪を着用すれば、パートナーの愛をつなぎとめておける、と信じられていたそうです。
愛する人への思いは何千年も前から変わらない、そんなことを感じられる由来ですね。世界には「結婚指輪は右手薬指に着用する」という国もかなりの数ありますが、そうした国でも、婚約指輪は左手薬指に着用するのが一般的です。
(参考)結婚指輪はどの指にはめるべき?それぞれの指が持つ意味や指のサイズのはかり方を解説
婚約指輪と結婚指輪の違い
「結婚に関する指輪は、どうして婚約指輪と結婚指輪の2つの指輪があるの?」と疑問に思う人もいるかもしれません。
2つの指輪は、さまざまな点で異なります。婚約指輪は、婚約記念品としてパートナーの片方のみが左手の薬指に着用する指輪なのに対し、結婚指輪は夫婦ふたりで着用する指輪です。
デザインも、ダイヤモンドをあしらった華やかなものが多いのに対し、結婚指輪は日常使いを前提とするためシンプルなデザインが多く、宝石が付いていないプレーンなリングも人気です。その分、1本あたりの価格は婚約指輪のほうが高くなるのが一般的です。
また結婚指輪は、結婚式の“指輪交換の儀式”で用いられる指輪です。婚約指輪よりも歴史は浅く、結婚指輪の慣習が始まったのは、ローマ教皇が結婚した9世紀頃。キリスト教の普及に従ってヨーロッパ全域に広がっていき、13世紀頃には浸透したといわれています。ただし、日本においては結婚指輪の文化が広まったのは明治時代後半から大正時代の頃で、婚約指輪の普及よりも少し早い時期になります。
婚約指輪と結婚指輪の重ね着け
最近は、婚約指輪を日常的に、結婚指輪と一緒に楽しみたいと考える人も増えています。最新のデータ(※1)によれば、婚約指輪の購入を決めたポイントとして、「結婚指輪と重ね着けがしたかったから」(22.5%、複数回答)が3番目に多い理由としてランクインしています
さらに結婚指輪を決定する際に重視したポイントでも、「重ね着けができるデザインであること」を挙げている人(34.6%、複数回答)と2番目に多い理由としてランクインしており、重ね着けを前提に指輪を選ぶのは、今や当たり前の時代になっているといえそうです。
そのようなニーズを受け、重ね着けのコーディネートリングは数多く販売されています。本コラムを運営するラザールダイヤモンドのセットリングのコーディネート一覧は、こちらからご覧ください。
【THE BROOKLYN/ECHO】
【WILL/WITH】
(※1)「ゼクシィ結婚トレンド調査2021」
婚約指輪と結婚指輪を重ね着けする意味と正しい着け方
婚約指輪と結婚指輪を重ね着けする場合には、正しい着用の順番があります。左手薬指に先に結婚指輪をはめ、その上から婚約指輪を重ねるのが正式な着用方法。これにより、「愛の誓いを、結婚という契約によってロックする」という意味合いを込めることができます。
ただし、「絶対にこの順番で着用しなければならない」という決まりはありません。冠婚葬祭などのフォーマルな場面では、正式な順番で着用しておくのがおすすめですが、普段はそれぞれを別の指や左右の指に着用するなど、自由に重ね着けを楽しんでOKです。
婚約指輪の価格相場
最新の調査(※1)によれば、婚約指輪の購入価格の全国平均は35万円となっており、もっとも高いのは首都圏エリアで38万6000円。もっとも低い青森・秋田・岩手エリアで29万7000円となっています。中には100万円以上という回答もありますが、全体で見れば20〜50万円の範囲に約6割がおさまっています。
国税庁が行った最新調査(※3)によれば、年間を通じて勤務した給与所得者の平均年収は 433.1万円。上記と併せて計算すると、婚約指輪の平均価格は給料の0.8ヶ月分となります。景気の良かった時代には「給料3ヶ月分」が基準と言われていましたが、現在は<約1ヶ月分>を目安と考えるといいでしょう。
続いては、婚約指輪の価格を左右する、ダイヤモンドのグレードや指輪の素材、デザインについて見ていきましょう。
ダイヤのグレード
婚約指輪の実に96%以上(※1)に用いられているダイヤモンドですが、その価格はグレードによって大きく異なります。ダイヤモンドのグレードは、【4C】という4種類の評価基準を用いて判定します。4Cとは「カラット」「カラー」「クラリティ」「カット」の頭文字を取った略称です。
「カラット」は大きさをあらわす単位というイメージがありますが、実は宝石の重さを表す単位。1カラット=0.2gで、婚約指輪で用いられているダイヤモンドのうち全体の6割弱を占めているのは、0.2〜0.4ct未満のものになります(※1)。
「カラー」はその名のとおり、色の判定。ダイヤモンドの場合、無色透明に近いものほどグレードが高くなり、23段階で評価されます。
そして「クラリティ」は透明度をあらわす単位。天然鉱石であるダイヤモンドにはわずかにですが内包物が含まれています。その数や大きさ、傷などの具合によって、11段階で評価されます。
最後に「カット」は採掘後、人の手でなされるカット技術のレベルを判断されます。グレードが高いほど輝きが増し、5段階で評価されます。
(参考)基礎知識!ダイヤモンドの「4C」ってなに?
リングの素材
リングの素材によっても、価格は変わります。婚約指輪で一番人気の素材は「プラチナ(85%)」で、次いで「ゴールド(10.3%)」(※1)。どちらも希少性があり、価値の高い金属のため、「用いられる素材の量」が多いほど価格は高くなります。ゴールドであれば、K18(ゴールド含有率75%)のほうが、K14(ゴールド含有率58%)よりも高価になり、同じデザインであれば2mm幅のリングよりも3mm幅のリングのほうが価格は張る、といった具合です。
デザイン
一般的にはシンプルでプレーンなデザインよりも、細部まで繊細な細工が施された複雑なデザインのほうが加工に手間がかかるため、指輪の価格にも反映されてきます。素材やダイヤモンドのグレードが同等であれば、シンプルで華奢なデザインの婚約指輪ほど手頃な価格となる、と理解しておいて間違いはないでしょう。
(※1)「結婚トレンド調査2021」より
(※3)令和2年分 民間給与実態調べ
まとめ
以上、婚約指輪が持つ意味や結婚指輪との違いについてご紹介しました。婚約指輪は何千年もの間、愛しあうカップルたちに必要とされてきたらこそ、今なお根強く支持されていると考えられます。本来の意味を知っておくと、贈り物の意義もより深いものに感じられそうですね。婚約指輪を検討する際には、ぜひ参考にしてみてください。
更新日時:2022.04.20