プロポーズの記念や生涯の愛の誓いとして、パートナーに贈る婚約指輪。しかし近年はさまざまな事情から、婚約指輪を用意しないことを決めるカップルもいます。

そこで本コラムでは、「婚約指輪はいらない」という場合の理由や贈る側・贈られる側の本音、婚約指輪を贈らない場合のリスク、婚約指輪の代わりになるアイテムなど、いろいろな角度から婚約指輪の必要性について考えていきます。

「婚約指輪はいらない」と言った理由

最新のアンケート調査(※1)によれば、婚約指輪を用意しなかった人の割合は<約3割>となっています。その理由にはどのようなものがあるのでしょうか。アンケートで挙がった代表的な意見に加え、「婚約指輪はいらない」という人たちが語る主な理由をご紹介します。

必要性を感じなかったから

婚約期間には毎日着用するものの、結婚後は着用機会が限られる婚約指輪。日常的に身に着けている人が多い結婚指輪に比べると着用回数が限られるため、「必要ない」と考える人もいるようです。

婚約指輪はダイヤモンドの付いたデザインを購入する人が約96%というデータ(※2)もあり、ダイヤモンドの輝きを重視した高さのある華やかなデザインのリングも少なくありません。特別なお出かけや冠婚葬祭のときには映えますが、「普段使えないから必要ない」と考える人もいます。

さらに婚約指輪は貴金属資産として、親や祖父母世代から引き継ぐ人もいます。少数派ながら、「引き継げる指輪があり、新しいものを買う必要がない」とう人もいるようです。

経済的な理由から

何かと物入りな結婚の時期。お金に余裕があれば買いたかったけれど、予算的に難しかったため、ふたりで話し合って婚約指輪を買わない決断をするカップルも少なくありません。「結婚指輪と婚約指輪、両方は買えないので結婚指輪を優先した」という意見もよく聞かれます。中には「結婚時には予算がなくて諦めたものの、結婚5周年、10周年などのタイミングで改めて婚約指輪を贈った」というカップルもいるようです。

パートナーへの気遣いで

エンゲージリングの購入平均価格は、全国平均で35万円(※2)。安価な贈り物ではないため、パートナーは「贈るよ」と言ってくれていても、本心は違っていても、気遣いから「いらない」と伝える人もいます。経済的な負担をかけたくない、他にもいろいろと負担してもらっているから申し訳ない、という気持ちから、本音ではない言葉を発してしまうケースもあるようです。

金属アレルギーがあるから

全体から見れば少数ですが、金属アレルギーの兆候があり、指輪の着用に不安を感じて「いらない」という人もいます。多くの婚約指輪に使われているプラチナは比較的アレルギーが起こりにくい素材と言われていますが、心配な場合はPt950など純度の高いプラチナ素材を検討してみるのも一案です。「金属アレルギーの有無がはっきりしないけれど心配」という方は一度、病院等でアレルギーのパッチテストを受けてみることも検討してみるのがおすすめです。

他のものが欲しかったから

婚約記念品は、必ずしも婚約指輪でなくてはならない決まりはありません。時計やネックレスなどを贈る人もいますし、使用頻度の少ない指輪に予算を使うよりは、家具・家電・食器など、そのとき欲しい実用的なものを希望する人も。「挙式やハネムーンを豪華にしたかったから、婚約指輪の予算をそちらに充てた」といった選択をするカップルもいます。

(※1)みんなのウェディング「2020-2021婚約指輪・結婚指輪に関するアンケート」
(過去3年以内に婚約指輪と結婚指輪を購入(もらった方も含む)された方、または結婚指輪のみを購入(もらった方も含む)された方257名を対象、2021年調査)
(※2) 「ゼクシィ結婚トレンド調査2021」

「婚約指輪はいらない」と言ったパートナーの本音

婚約指輪を贈るべきか、もらっていいのか迷ったときに気になるのが、パートナーの本音。「婚約指輪はいらない」という人たちの本音にはどのようなものがあるか、ご紹介します。

特に後悔はない

そもそもジュエリーや装飾品全般に興味がない人や、「サプライズで贈り物をされるのが苦手」「ロマンチックなやりとりが性に合わない」という人もおり、その場合は、本心から「婚約指輪はいらない」と思っている可能性も。交際中にそのような本音を聞いていた場合は、贈らない選択をしても、後悔や心残りが生じる可能性は低いでしょう。

そのときは良かったが、後になって後悔した

一方、結婚のタイミングでは「婚約指輪はいらない」と決めたものの、あとになって「やっぱり欲しくなった」「一生に一度のものだし、贈ってもらえばよかった」「結婚指輪と重ね着けで楽しめばよかった」など、気持ちが変わる人も。結婚のタイミングを逃すと高価なジュエリーはなかなか購入しづらいので、少しでも欲しい気持ちがある人はパートナーに相談してみるのがおすすめです。

本当は欲しい

「贅沢品なので、自分からは欲しいと言えない」「結婚式のことでたくさん希望を出したので、婚約指輪は我慢しようと思った」など、本音では「もらえたら嬉しい」と思っている人も。実は贈る側としても、「予算が厳しくても、人並みの贈り物をしてあげたい」「婚約指輪を贈らなかったことでリスクを抱えるくらいなら、贈っておきたい」と考える人は少なくありません。本当は欲しいと思っているならば、正直に伝えるのがベターです。

贈る側としても、パートナーの本音は気にかけてあげるといいかもしれません。パートナーが普段からジュエリーを愛用している場合、友人の指輪の話題をしていた場合などは、婚約指輪に価値を見出している可能性も高いでしょう。「本音をはっきり言ってくれたらラクなのに」と思う人もいるでしょうが、「大好きな相手だからこそ負担をかけたくない」と思ってしまうのも、人の心理。「婚約指輪はいらない」と言われてもすぐに真に受けず、本当にそれでいいのかどうか、日を改めて何度か、意思確認をしてみることをおすすめします。

婚約指輪を用意しない場合、代わりに贈るアイテム

婚約指輪を用意しなかった場合でも、代わりのものを贈るカップルや、あるいはその予算を別のことに活用するカップルもいます。婚約指輪の代わりに贈られる代表的なアイテムについてご紹介します。

指輪以外のアクセサリー

最新の調査(※2)によれば、婚約記念品を贈った人の9割以上の人が婚約指輪を贈っています。ただ少数派ながら、「ネックレス」(5.5%)や「時計」(2.2%)を選んでいる人も。職業柄、仕事中に指輪を着用できないルールがあるために、ネックレスやピアスなどのほうが使い勝手が良いと考える人もいますし、イヤリング、ブレスレットなどの選択肢もあります。

落ち着いたデザインのものを選べば、日常生活のなかでも気軽に身に着けられることができ、婚約指輪よりも頻度高く活用できる可能性も。婚約指輪の代わりに贈る場合は、トレンドに左右されにくい王道デザインを選ぶのがおすすめです。

時計

上述のとおり、腕時計は婚約記念品のなかでも人気3位の品物。婚約の記念として、パートナー間でペアデザインやお揃いのブランドのものを贈り合う、というカップルもいます。結婚指輪と同様、毎日着用できるものですし、時計には「一緒に時を刻む」という意味合いも込められますし、愛するふたりにはぴったりの記念品。婚約の記念日やイニシャルなど、時計の裏面に刻印ができるサービスをしているところもあります。婚約指輪の代わりに贈る場合は、アクセサリーと同様、不変的なデザインを選ぶのがおすすめです。

新生活に必要な家具や家電

結婚の際には新居に引っ越す人も多いため、家具や家電を揃えたい、インテリアにこだわって良いものを買いたい、という考えから婚約指輪の費用を充てるカップルもいます。日常生活や暮らしの空間を充実させたいという人の場合、家具や家電などの購入を優先させるケースもあるようです。

結婚指輪をグレードアップ

婚約指輪はいらないけれど、毎日着ける結婚指輪にはこだわりたい!と考える人もいます。結婚指輪はシンプルで装飾の少ないデザインが好まれやすいですが、毎日着用する指輪だからこそ、多少値が張ってもお気に入りの宝石を入れたり、デザインにこだわったりしてみるのは一案。婚約指輪に費用がかからない分、メレダイヤモンドがふんだんに使われたデザインの結婚指輪を選べたり、オーダーメイドのリングを作ったりとグレードアップができるので、より思い入れの持てる結婚記念品となることでしょう。

新婚旅行をグレードアップ

旅行好きなカップルの場合は、新婚旅行をグレードアップさせる、というプランもあります。普段はなかなか泊まれないようなホテルに泊まったり、海外の高級レストランに出かけてみたり、簡単には行けないような国や地域にこだわったりすれば、一生の思い出に残る特別な旅行にできますよね。旅行に予算を使いたいとふたりの意見が一致した場合は、検討してみるといいでしょう。

(※2) 「ゼクシィ結婚トレンド調査2021」

先輩カップルの実例

続いて、先輩カップルたちの実態を見ていきましょう。

婚約指輪をもらわなかった人は、約4人に1人!

最新の調査(※3)によれば、婚約指輪を買ってもらった人は全体の7割以上(74.1%)。「買ってもらっていない」と回答した人は25.9%で、約4人に1人という結果になっています。

自ら「いらない」と言った人は、約6割!

また同調査では、「買ってもらっていない」と回答した人に対し、その理由についても尋ねています。

最も多かったのは「自分がいらないと伝えたから」(57.1%)。本音はさておき、6割弱の人が、自ら「いらない」と申し出ていることが分かります。

続いて多かったのは、「経済的な理由で買ってもらえなかったから」(17.9%)。2割弱の人が、欲しかったものの、相手から無理だと言われたと回答しています。そのほか、「指輪以外のものをもらったから」(14.3%)という人も一定数おり、約7人に1人は婚約指輪以外の婚約記念品を選んでいることが分かります。

本気で「いらない」と言っているのは、約3人に1人!?

さらに、上述の項目で「自分がいらないと伝えた」と回答者に対し、いらないと言った理由についても質問されています(複数回答)。

もっとも多かったのが、「必要性を感じなかったから」(62.5%)。前項で「自らいらない」と伝えた人の割合と掛け合わせると、婚約指輪を買ってもらわなかった人のうち、約3人に1人(35.7%)は本音で「婚約指輪はいらない」と考えている可能性が推測できます。

続いて多かったのが、「結婚指輪の費用に充てたかったから」(50.0%)。婚約指輪を買わなかった分、結婚指輪の購入に充てている人も多くいることがわかります。そのほか、「貯蓄に回したから」(12.5%)「新婚旅行の費用に充てたかったから」(6.2%)、「家や車の費用に充てたかったから」(6.2%)といった回答が並びました。

総じて、予算的な問題や婚約指輪の実用性・必要性の面で、「いらない」と決断する人が多いことが分かります。

(※3)「婚約指輪に関する実態調査」(2021年11〜12月調査、コロナ禍に結婚指輪を購入したパートナー108名対象)

プロポーズの瞬間に婚約指輪をもらった人は、4割!

また婚約指輪を購入する人たちのなかでも、最近はプロポーズが成功した後にふたりで一緒に購入に出かけるカップルが増えています。

一方で、箱をパカッと開けてプロポーズをする、そんなサプライズプロポーズをしたい(されたい)という人もいることでしょう。ある調査によれば(※4)、プロポーズのその瞬間に婚約指輪をもらったという人は約4割。「婚約指輪は必要ないかも」「しゃれたプロポーズでなくても構わない」と思っていたとしても、実際にドラマのようなプロポーズをされると、ちょっと嬉しい気持ちにはなりそうですね。

(※4)みんなのウェディング「プロポーズ」に関する調査概要
(2019年12月調査、過去3年以内にみんなのウェディングに登録された方200人を対象)

「婚約指輪はいらない」と言われて贈らないことのリスク

もしパートナーに「婚約指輪はいらない」と言われ、婚約指輪を贈らない選択をした場合には、どのようなリスクが想定されるのでしょうか。代表的なリスクを3つ紹介します。

・親や世間の目が気になる

婚約指輪は結婚までの期間に着用する指輪。そのため、パートナーの親への挨拶や両家顔合わせの際には活躍します。もし婚約指輪をしていなかったり、買わなかったという話になったりすれば、パートナーの親に「それほど経済状況が厳しいのだろうか」と思われてしまう可能性も。相手の親だけでなく、自分の親も不安にさせてしまう可能性があり、「しっかりした人と結婚するのだな」と安心感を与えられるだけでも、婚約指輪には意義があると言えるでしょう。

またよっぽどジュエリーコレクションがある人以外、婚約指輪は手持ちのなかで“一番高価でよそゆきのジュエリー”になることも少なくありません。友人・知人の結婚パーティーに参加した際や職場で結婚の報告する際、婚約指輪を着用できないことで本人がちょっぴり残念な(気恥ずかしい)気持ちになってしまう可能性も。親や世間の目が気になる人にとっては、婚約指輪を贈らないリスクはそれなりにあると言えるでしょう。

・ことあるごとに嫌味を言われる

婚約時や新婚時代はラブラブなカップルも、年月が過ぎれば落ち着いてくるのが常。結婚という生活のなかでは、喧嘩になったり、険悪になったりする瞬間も出てきます。パートナーの我慢や不満が募りすぎると、「婚約指輪だって買ってもらっていないのに!」といった嫌味を言われてしまう可能性も。実際の夫婦からも、よく聞かれる意見です。

結婚後何年か経ってから婚約指輪を購入する人もいますが、結婚しようと決意を固めた瞬間の幸せな思い出は、やはりその時期だけのもの。明確に「いらない」と意思が固まっているのでなければ、先々のことも考えて検討してみるのがおすすめです。

・離婚率が高まる可能性も

さらに、婚約指輪を贈らなかったカップルは離婚率が高くなる!?という驚きのデータもあります。ある調査(※5)によれば、離婚者は結婚に関するセレモニーを実施する割合が既婚者に比べて低いことが分かっており、婚約指輪に関しても、既婚者は「婚約指輪をもらった」という人が66.8%に対して、離婚者では56.4%に止まっています。

「婚約指輪を贈らなかったから、離婚率が高くなる」とまでは断言できませんが、婚約指輪を贈るなどの“儀式”を大切にしなかったカップルのほうが、離婚率が高い傾向はあると言えそうです。

・価格よりも「贈ろうとする気持ち」が大切

婚約指輪はプロポーズの瞬間や恋人時代の幸せを象徴する存在でもあるので、指輪を見るたびに思い出がよみがえる、といった効果もあります。また婚約指輪は高価で華やかなデザイン、というイメージがありますが、実際には日常的に身に着けられる落ち着いたデザインのものや手頃な価格帯のものもあります。少しでも気になる方は先入観にとらわれず、一度検討してみるといいかもしれません。

「周囲に見劣るものを選ぶくらいなら買わないほうがマシ」と考える人もいるかもしれませんが、何よりも大切なのは贈ろうと思ったその気持ち。余裕がなくても頑張って贈ってくれた、その感動が愛を深めてくれることも少なくありません。結婚は人生の大きな決断なので、迷いや不安を持つ方も少なくありません。そのような時期に、「あなたと結婚がしたいから、これだけのエネルギーを注いでいるんだ」ということを行動で示していくことは、その後のふたりの絆にも影響します。その目的で言えば、婚約指輪は非常に重要な役割を担っていると言えるでしょう。

(※5)リクルート総研「夫婦関係調査」

まとめ

婚約指輪は、結婚を約束しあった記念として一生に一度の大切な記念品になります。「いらない」と言われた場合でも鵜呑みにせず、きちんとその理由を尋ねてみましょう。よくよく話を聞いてみれば、「本当は欲しいと思っている」という本音が飛び出すこともあります。自分自身に贈りたい気持ちがある場合も同様、きちんとその意志を伝えた上で、お互いに納得のいく結論を出すようにするのがおすすめです。一生の後悔やリスクを抱えないよう、まずはふたりでしっかりと話し合ってみてくださいね。

更新日時:2022.04.20